雨庵 金沢

旅行中、雨に降られたくないという常識が覆される。年間200日ほどが雨の日だという石川県金沢市。日本三大庭園の一つ「兼六園」を筆頭に観光名所が多い土地だが、雨がよく降るのが難点、というのが偽らざる心境だった。しかし「雨庵 金沢」に泊まると、それが思い込みだったと気付かされる。館内に入ると、目の前に木材をふんだんに取り入れながらも現代アートを組み込んだ、不思議な感覚の空間が広がる。ここは、宿泊者専用のラウンジ「ハレの間」。金沢の伝統工芸である和傘や和紙にのれん、書家や作家によるアート、金沢についての書物などが整然と並べられ、まるで居心地の良い美術館やカフェに来たかのよう。雨の日でも館内で優雅に、金沢の歴史や伝統を感じることができる。時には雨宿りをしながら、時には雨上がりの空に照らされた町並みを眺めながら。その時気付く。雨すらも、金沢の魅力の一つだったと。